この発想はアートだと思う。
確率変数 $X_1, X_2, \ldots, X_i, \ldots, X_n$ が互いに独立に $\mathrm{N}(\mu, \s^2)$ に従うとき、統計量
\[
T=\frac{\bar{X}-\mu}{\sqrt{\frac{U^2}{n}}}
\] は自由度 $n-1$ の $t$ 分布に従う。
ただし、
\[
\bar{X}=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_i,
\] \[
U^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar{X})^2,
\] とする。
まずは $t$ 分布を思い出してみよう・・・
$Z$ が標準正規分布 ${\mathrm N}(0, 1^2)$ に従い、$V$ が $Z$ とは独立に自由度 $\nu$ の $\chi^2$ 分布に従うとき、
\[
Y=\frac{Z}{\sqrt{V/\nu}}
\] は自由度 $\nu$ の $t$ 分布に従う。
導出は計算練習になった。
標準正規分布に従う確率変数を、$\chi^2$ 分布に従う確率変数を自由度で割ったものの平方根で割った確率変数が $t$ 分布に従う事が分かる。
$T$ の分布を求めてみよう。
まず、標準正規分布に従う確率変数を引っ張ってこなくてはならない。
$T$ の中では $\bar{X}$ が $\mathrm{N}(\mu, \s^2/n)$ に従うから、
\[
Z=\frac{\bar{X}-\mu}{\sqrt{\s^2/n}} \sim \mathrm{N}(0, 1^2),
\] である。
$\chi^2$ 分布に従う確率変数を探すと、
\[
V=(n-1)\frac{U^2}{\s^2}=
\sum_{i=1}^n \left( \frac{X_i-\bar{X}}{\s} \right)^2 \sim \chi^2(n-1)
\] がみつかる。
ホントはちゃんと確認が必要だが、↑の二つは独立である。
$Z$ を $\sqrt{V/(n-1)}$ で割った統計量は、自由度 $n-1$ の $t$ 分布に従う事が分かる。
実際に比を取ってみると、
\[
\frac{\frac{\bar{X}-\mu}{\sqrt{\s^2/n}}}{\sqrt{(n-1)\frac{U^2}{\s^2}/(n-1)}}=
\frac{\bar{X}-\mu}{\sqrt{\frac{U^2}{n}}}\sim t(n-1)
\] 実に巧い。