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分散安定化変換

分散安定化変換は、確率変数 $Y$ の期待値が $\mu$ で分散が $g(\mu)$、つまり $Y$ の分散が期待値の関数であるとし、$h(Y)$ の分散 $\mathrm{Var}\{h(Y)\}$ が漸近的に一定の値になるような変換 $h$ を考える方法です。

分散安定化変換

デルタ法を用いると、$h(Y)$ の分散は
\[
\mathrm{Var}\{h(Y)\}\simeq\left\{h^{\prime}(\mu)\right\}^2\mathrm{Var}\{Y\}
\] で近似でき、$\mathrm{Var}\{Y\}=g(\mu)$ だから、
\[
\mathrm{Var}\{h(Y)\}\simeq (h^{\prime}(\mu))^2 g(\mu)
\] となる。

さらに、上で求めた近似分散 $\mathrm{Var}\{h(Y)\}$ が一定の値になるような変換 $h$ を導びけばよいことになる。

通常は、定数 $c$ を用いて
\[
\{h^{\prime}(t)\}^2 g(t)=c
\] \[
h^{\prime}(t)=\sqrt{\frac{c}{g(t)}}
\] になる様な変換 $h$ を求めればいい。

たとえば、ポアソン分布の場合は、分散は期待値に等しく $g(t)=t$ だから
\[
h^{\prime}(t)=\sqrt{\frac{c}{t}}
\] この微分方程式を解くと
\[
h(t)=2 c t^{1/2}
\] になる。
また、$c=0.5$ と置いた場合は、よく見る平方根変換 (square root transformation) が得られる。


デルタ法を用いるので、このような変換によって漸近的に分散が一定になることを示すことができる。

一変数のデルタ法

関数 $h(Y)$ の $\mu$ の周りの一次の Taylor 展開は、
\[
h(Y)= h(\mu)+h^{\prime}(\mu)(Y-\mu)+o(|Y-\mu|)
\] となる ($h^{\prime}$ は微分)。

上式から $h(Y)$ の期待値は
\[
\mathrm{E}\{h(Y)\}=h(\mu)+o(|Y-\mu|)
\] となる。
分散は
\[
\mathrm{Var}\{h(Y)\}=\left\{h^{\prime}(\mu)\right\}^2\mathrm{Var}\{Y\}+o(|Y-\mu|)
\] となる。

履歴

2011-05-30 分かりやすくなるように編集しました